マウスピース矯正中は食事の制限がない?注意点を完全解説
この記事の監修者
三上 智彦
医療法人社団佑健会
2021/7/20
2024/7/18
#マウスピース矯正
「マウスピース矯正を始めたから食事制限をしないといけないのかな・・・」
「会社の同僚とランチにもいけなくなるのかな・・・」
マウスピース矯正を始めた方の多くは、このような矯正中の食事に関する疑問を抱くのではないでしょうか。
マウスピース矯正によって、日常の食生活をどれほど変えなくてはいけないのかは知っておきたいですよね。
そこで今回は、「マウスピース矯正では、実はそれほど食事を変えなくていい」ということをお伝えしていきます。
ただし、マウスピース矯正には基本的に食事制限はありませんが、避けるべき食事があるのは事実ですので、マウスピース矯正中に避けるべき「NG食事」についても解説しています。
この記事で紹介する「NG食事」を避ければ、マウスピース矯正中でも、矯正前とほとんど同じような食生活を送ることができます。
マウスピース矯正中の食事について気になっている方は必見です。
- 2.2食後は必ず歯磨きをする
- 4.1いつもより入念に歯を磨く
- 4.2デンタルフロスを使う
- 4.3ウォーターフロスを使う
- 7まとめ
マウスピース矯正は基本的に食事制限がない
マウスピース矯正中は基本的に食事制限がありません。
なぜなら、矯正中でも食事のときはマウスピースを外すことができるからです。
ワイヤー矯正の場合、患者さん自身で矯正器具を着脱することができないので、矯正器具が外れないように食事をする必要があります。
また、ワイヤー矯正ではワイヤーと歯の間に小さな隙間があります。
その隙間に食べ物が引っかかると、取れにくく、虫歯の発生につながってしまう可能性もあります。
マウスピース矯正は取り外しができ、食事が矯正装置に影響を与えることはないので、矯正中でもワイヤー矯正のように食事が制限されることはありません。
マウスピース矯正と食事の基本的なきまり
マウスピース矯正中は、矯正に支障が出ないように食事に関するきまりがあります。
今回はマウスピース矯正と食事の基本的なきまりを4つ紹介していきます。
食事のときはマウスピースを外す
まず最も基本的なきまりですが、食事中はマウスピースを外すようにしましょう。
それには3つの理由があります。
1つ目の理由は、マウスピースを装着したまま食事をすると、マウスピースと歯の間に食べかすが入り込んで、歯垢を作る原因になるからです。
歯垢は蓄積すると歯石となり、虫歯や歯周病のもとになります。
2つ目の理由は、マウスピースを装着したままの食事はマウスピースにダメージを与えてしまいます。
マウスピースはポリウレタンというプラスチックでできており、特に強い力を加えなければ壊れることはありません。
しかし、食事では40~60kgの噛む力が加わってしまいます。
一般的なマウスピースは薄さが0.5mm程度なので、装着したまま食事をしてしまうと、噛む力でマウスピースが変形してしまう恐れがあります。
3つ目の理由は、マウスピース型矯正装置を装着したまま食事をしてしまうと、透明のマウスピースに食事から色が移って、マウスピースの矯正器具が目立ってしまうからです。
マウスピースや口内環境にダメージを与えないためにも、食事のときはマウスピースを外すことが大事です。
食後は必ず歯磨きをする
マウスピース矯正中は、食事の直後に必ず歯磨きをするようにしましょう。
食べかすが歯と歯の間に残ったまま、マウスピースを装着すると虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまうからです。
通常、マウスピースを装着していない状態であれば、食べかすは飲み物を飲んだときや口をゆすいだ時に除去されることがあります。
しかし歯磨きをせずにマウスピースを装着することは、「フタをする」ことになるので、水や唾液に食べかすが触れず、流されていくことはありません。
虫歯や歯周病は、マウスピース矯正を中断して治療を行わなくてはいけないので、矯正期間も延びてしまうことになります。
矯正期間を延ばさないためにも、マウスピース矯正中は食後の歯磨きを徹底する必要があります。
学生や社会人だと、昼食後に歯磨きをするほどの時間がないときは、マウスウォッシュのみで代用する方もいるようですが、マウスウォッシュでは、歯の隙間の食べかすが取れることはないので、基本的におすすめはしません。
しかし、食後に何もしないよりは、少しでも口の中を清潔にした方がいいので、どうしても時間がない場合はマウスウォッシュを使っておいて、時間が取れたら歯磨きをするようにしましょう。
マウスピースは外したらケースに入れる
マウスピースは外したらケースに入れるようにしましょう。
ケースに入れることで、紛失や破損の可能性を下げることができます。
マウスピース矯正では、「アライナー」と呼ばれる着脱可能な透明のマウスピース型矯正装置を用います。
例えば、外食時のように自宅外で着脱を行うときには、透明なマウスピースが帰り際に視界に入らず、お店のテーブルに置いてきてしまう可能性があります。
また、地面に落としてしまったマウスピースを誤って踏んで壊してしまうこともあります。
紛失、破損によるマウスピースの再製作で追加費用がかからないようにするためにも、マウスピース専用のケースを必ず持っておきましょう。
専用ケースは、ブランドによっては申し込みをすると無料でもらえる場合もありますし、Amazonなどで気に入った商品を購入することもできます。
マウスピースは定期的にクリーニングを行う
マウスピースは定期的にクリーニングを行わなくてはいけません。
食事の後の歯磨きを徹底しても、1日20時間以上口に入れているマウスピースは、クリーニングを行わないと、細菌の温床になって悪臭や口内環境の悪化をもたらします。
基本的なクリーニングは、毎日の終わりに歯ブラシと歯磨き粉を使って磨くことですが、メーカーによっては週に1、2回は専用のクリーニング剤を使うことを推奨しています。
例えば、マウスピース矯正の代表的なブランドであるインビザラインには、「インビザライン・クリーニング・クリスタル」という20個で1000~1500円の専用クリーニング剤があり、歯科医院で販売されています。
ただし、市販の洗浄剤はマウスピースを劣化させる場合があるので、歯科医師に相談して使うようにしましょう。
口内を清潔に保つためには歯だけでなく、マウスピースもクリーニングが必要であることを覚えておきましょう。
マウスピース矯正中のNGな食事
ワイヤー矯正とは異なり、マウスピース矯正は矯正器具が着脱可能なので、基本的に矯正中でも食事制限はありません。
しかし、矯正の効果を最大限に発揮するために避けてほしい「NGな食事」があります。
ここでは、マウスピース矯正中の「NGな食事」とその食べ物がNGな理由を解説していきます。
硬いもの
マウスピース矯正は、「硬いもの」はNGです。
なぜなら、矯正で歯が動いている間は、硬い食べ物を食べると痛みが生じる可能性があるからです。
歯科矯正は歯に力をかけ続けることで歯を動かしていきますが、その間、歯が受ける圧力を和らげる働きをする根元の繊維(歯根膜)が敏感になっているので、痛みを感じやすくなってしまうのです。
せんべいやステーキなどは分かりやすい例ですが、注意してほしいのは果物や野菜です。
健康のために積極的に果物や野菜を摂取している方がいらっしゃると思います。
リンゴやニンジンといった一部の果物や野菜は硬さがあるので、やわらかくなるように調理するか、細かく刻むことが大切です。
矯正中は歯の根元が敏感になっていて、硬い食べ物を噛むと痛みを感じることがありますので、基本的には硬い食べ物は避けるか、硬さを感じない調理をする必要があります。
粘着性の高いもの
矯正中はマウスピースを外していても、粘着性の高い食べ物は避けるようにしましょう。
粘着性の高い食べ物は、歯の表面に設置された「アタッチメント」などの補助矯正器具が外れる原因になってしまうからです。
アタッチメントはマウスピースをより密着させて、矯正力を上げる役割をしているので、外れると歯科医院で再度設置してもらわなくてはいけなくなります。
また、粘着性の高い食べ物は、歯ブラシで歯磨きをしても残留物が残りやすいのもNG食事である理由です。
残留物が歯に残ったまま、マウスピースを装着すると、歯の表面や隙間に「菌の元」を閉じ込めることになり、虫歯や歯周病のリスクが上がってしまいます。
キャラメルを想像していただくとわかりやすいですが、歯にくっついてなかなか取れないことがあると思います。
アタッチメントが取れることや、虫歯になることで矯正期間が延びてしまうことを防ぐためにも、粘着性の高い食べ物は避けるようにしましょう。
NGなものを食べてしまったときの対処法
マウスピース矯正中に避けるべき「NG食事」があるとは言っても、友人との食事や飲み会などで、どうしてもNGなものを食べてしまうときがあると思います。
ここからは、NGなものを食べてしまったときの対処法をお伝えします。
いつもより入念に歯を磨く
シンプルですが最も重要なことは、いつもより入念に歯を磨くことです。
マウスピース矯正中に、グミやキャラメルのような粘着性が高くて甘いもの食べる場合、まず、アタッチメントにくっつかないことが大事ですが、食べ終えたあとに、残留物が歯にくっついたまま残らないようしなくてはいけません。
いつもの時間に5~10分追加し、奥歯を中心に食べ物を噛むのに使った部分を磨いていきます。
NGな食事をした場合は、まず、残留物が歯に残らないようにいつもより入念に歯を磨くことを徹底しましょう。
デンタルフロスを使う
NG食事をした場合は、デンタルフロスを使うことも重要です。
デンタルフロスは、糸状の繊維を歯間に通して歯垢の除去をするものです。
粘着性の高い食べ物は、歯と歯の隙間にもくっつくことが多く、硬い肉などは食事のあとに繊維が歯の間にかかっていることも多くあります。
NG食事のあとは、歯間ケアすることが重要になるので、歯磨きに加えてデンタルフロスを用いることがおすすめです。
ウォーターフロスを使う
NG食事のあとに口内を入念に手入れしたいときは、ウォーターフロスもおすすめです。
ウォーターフロスは、ノズルから噴出される水の力で口内をきれいにする機器で、上に紹介したデンタルフロスよりも、さらに効果的に歯垢の除去を行えます。
PubMedに掲載されている2013年の論文では、「歯ブラシとデンタルフロスの組み合わせよりも、歯ブラシとウォーターフロスの組み合わせが歯表面の歯垢除去において、より効果的である」と報告されています。
“The Waterpik Water Flosser and manual toothbrush is significantly more effective than a manual brush and string floss in removing plaque from tooth surfaces.”
(参考文献:PubMed)
*PubMedとは、アメリカ合衆国の国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の傘下にある機関によって運営される、医学論文専門の検索エンジンです。
マウスピース矯正中に歯垢の除去を怠ると、虫歯や歯周病のリスクが上がってしまいます。
特にNG食事の後は、歯の表面や隙間に残留物が残りがちなので、ウォーターフロスと歯ブラシ併用して入念に口内環境をきれいにしましょう。
マウスピース矯正中のNGな飲み物
マウスピース矯正中に飲み物を飲むときは、基本的にマウスピースを外す必要はありません。
しかし、食事と同様にマウスピース矯正中はNGな飲み物があります。
具体的には、甘い飲み物や色の濃い飲み物などはNGとされています。
詳しくは「マウスピース矯正中は飲み物に注意|本当に水しか飲めない?」をご覧ください。
マウスピース矯正中の食事で痛みがあるときの対処法
マウスピース矯正中は比較的痛みの少ない矯正方法ですが、食事の際に痛みが発生することがあります。
多くの場合、矯正器具によって歯が動いている状態に、ものを噛むときの圧力が加わることで痛みが発生しています。
痛みを感じている状態では、痛みを悪化させないためにも、いつも以上に食べ物の硬さなどに注意して食事を摂るようにしましょう。
痛みがひどい場合は、痛みの原因となっている炎症を抑えるためにロキソニンに代表されるイブプロフェン系の消炎鎮痛剤が服用されることがありますが、繰り返しの服用により骨の代謝を抑制し、歯の動きを遅くする場合があります。
歯科医院によっては、歯の動きに影響のない「カロナール錠」などのアセトアミノフェンの鎮痛剤を処方しているところもあります。
マウスピース矯正中の食事でひどく痛みを感じるようでしたら、まずは歯科医師に相談をしてみましょう。
詳しくは、「マウスピース矯正で痛いのはどんなとき?対処法も徹底解説」をご覧になってみてください。
まとめ
マウスピース矯正中は、基本的に食事制限をする必要がありません。
ただし、矯正中は避けてほしい食事が2種類あります。
それは、硬いものと粘着性の高いものです。
ステーキなどの硬いものは、噛む力によって歯の根元の繊維を刺激して痛みを発生させたり、繊維が歯の隙間に挟まって虫歯や歯周病の原因になったりします。
キャラメルやグミなどの粘着性の高いものは、歯の表面や歯間に残留しやすく、虫歯や歯周病のリスクを向上させてしまいます。
マウスピース矯正中に硬いものや粘着性の高いものを食べた場合は、口内に残留物が残らないように、入念にケアをする必要があります。
入念なケアには、デンタルフロスやウォーターフロスを使うことがおすすめです。
今回の記事で解説したNG食事に注意すれば、マウスピース矯正中は基本的に普段通りの食事をすることができます。
マウスピース矯正なら、会社の同僚とランチに行くときも、学校で昼食をとるときも心配はありません。
当サイトではマウスピース矯正が受けられるおすすめの医院を紹介していますので、マウスピース矯正を検討している方は、ぜひご覧になってみてください。
この記事の監修者
三上 智彦
経歴
2008年 東京歯科大学歯学部卒業 2009年 東京歯科大学歯学部附属病院臨床研修修了 2012年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野矯正歯科専攻生課程修了 2012年- 千葉県内矯正歯科医院勤務、医療法人社団佑健会勤務
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日本矯正歯科学会認定医/インビザライン認定ドクター 柏KT矯正歯科 院長。東京歯科大学卒。同大学院の矯正歯科専攻生課程修了。認定医やインビザライン認定ドクターの知識や数千ある治療経験から患者様の最適な治療を提案し、理想のゴールへ一歩でも近づけるような治療を心がけています。